FIREという言葉を初めて聞いたとき、「自分には関係ない話だな」と思った。
早期退職して悠々自適に暮らすイメージが強くて、よほどの資産家か、もともと稼ぎが多い人の話だと決めつけていた。
でも詳しく調べてみると、FIREの考え方そのものはかなり実用的だった。早期退職を目指さないとしても、「いくら貯めれば経済的に自由になれるか」という計算の基準として使えるし、積み立てを続けるモチベーションにもなった。
この記事では、FIREの仕組みと、普通の会社員が参考にできる部分を整理する。
FIREとは何か
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字だ。直訳すると「経済的自立・早期退職」。
資産から得られる運用益だけで生活費をまかなえる状態になり、働かなくても生きていける状態を目指す考え方だ。アメリカで2010年代に広まり、日本でも2020年頃からSNSやブログで話題になった。
「早期退職」というと40代・50代のイメージがあるが、FIREムーブメントでは30代での達成を目指す人も多い。
FIREの計算式「25倍ルール」
FIREに必要な資産額は、「年間生活費×25倍」という計算式が広く使われている。
たとえば年間の生活費が240万円(月20万円)なら、必要資産は6,000万円だ。年間300万円かかるなら7,500万円になる。
この数字の根拠は「4%ルール」と呼ばれるもので、資産を年利4%で運用しながら4%ずつ取り崩せば、元本が減らずに生活費を出し続けられるという考え方だ。米国の研究(トリニティスタディ)がもとになっている。
自分の場合で計算してみると、老後の生活費を月25万円(年300万円)と仮定すると、必要資産は7,500万円になる。楽天証券で月10万円・年利5%で積み立てると、20年で約4,100万円に届く計算だ。FIREの基準には届かないが、「老後に必要な水準の資産」を把握するための目安として使えると思っている。
FIREの種類
FIREは一種類ではなく、いくつかのバリエーションがある。
フルFIRE 完全に仕事を辞めて、資産の運用益だけで生活する。最もハードルが高い。
サイドFIRE(サイドFI) 資産はある程度あるが、少しだけ仕事をして生活費の一部を稼ぐ形。完全退職ではなく「やりたい仕事だけをする」状態に近い。フルFIREより必要資産が少ない。
リーンFIRE 生活費を極限まで削ることで必要資産を減らし、早期にFIREを達成する。月10〜15万円以下の生活費を目指す人も多い。
ファットFIRE 生活費を削らず、豊かな暮らしのまま資産運用だけで生きていくFIRE。最も必要資産が多くなる。
普通の会社員が現実的に参考にするなら、サイドFIREが一番近い気がする。「嫌な仕事を辞めて、自分で選んだ仕事だけをする」という意味合いで使っている人も多い。
普通の会社員がFIREを目指せるか
正直に言うと、フルFIREは多くの会社員にとってかなり難しい目標だ。
年収500万円の会社員が月10万円を積み立てても、20年後の資産は約4,000万円(年利5%想定)だ。フルFIREの基準(7,500万円以上)には及ばない。
ただ、「FIREを目指す意味がない」とは思わない。
FIREを意識するだけで、積み立てを続けるモチベーションが変わった。「なんとなく将来のために貯めている」より、「○○万円になったら選択肢が広がる」という具体的な目標に変わると、行動が変わる。
「FIREできるかどうか」より、「経済的な余裕を少しでも大きくする」という方向でFIREの考え方を使うのが、会社員には合っていると思っている。
FIREのために必要な3つのこと
① 支出を把握して下げる
FIREの達成に必要な資産額は、生活費が下がれば下がる。月20万円で暮らせる人と月30万円かかる人では、必要資産が2,500万円違う。
固定費(家賃・スマホ・保険など)を一度見直すだけで、毎月数万円の改善になるケースが多い。
② NISAとiDeCoを最大限使う
FIREを目指すには資産を増やす必要があり、税制優遇があるNISAとiDeCoは最優先で使うべきだ。NISAは年間360万円まで非課税で運用でき、iDeCoは掛金が全額控除になる。
自分はNISAで月10万円を積み立てている。出口戦略(資産の取り崩し方)まで考えると、NISAは特に有利だ。
→ 新NISAとは?会社員が知っておくべき制度の基本と始め方
→ iDeCoとは?会社員が節税しながら老後資金を増やす方法
③ 時間を味方につけて積み立てを続ける
FIREで最も重要なのは、長期間・継続的に積み立てることだ。複利の効果は時間が長いほど大きくなる。
途中で相場が下がっても積み立てを止めない。この一点が、資産形成の結果を大きく左右する。
FIREを「目標」にするより「ものさし」として使う
「FIRE達成」を最終目標にすると、達成できないことへのストレスになるケースがある。
それより、FIREの考え方を「どれくらいあれば経済的に選択肢が広がるか」を知るためのものさしとして使う方が、実生活に役立てやすい。
たとえば「3,000万円貯まったら仕事の選び方が変わる」「5,000万円あれば転職先を妥協しなくていい」という具体的なイメージが持てると、日々の積み立てに意味が生まれる。
FIRE自体を目指さなくても、FIREを知ることで「いくら目指すべきか」が明確になる。それだけでも、積み立てを続ける理由になると思っている。
→ 老後2000万円問題の真実|会社員が本当に必要な老後資金を計算する
→ 投資の出口戦略|NISA資産の取り崩し方と老後生活費の設計
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